ジュノさんは、王位を継ぐ人物から企業の御曹司、経営の経験がない新米社長まで、責任を背負う男性を異なるジャンルで演じてきた俳優です。イ・ジュノさんの名前でも知られ、恋愛を中心にした作品と、働く人々の衝突を描く作品の両方に出演しています。
まず押さえたいのは、宮廷での立場と個人の思いが交差する『赤い袖先』、ホテルを舞台にしたロマンティックコメディ『キング・ザ・ランド』、1997年の経済危機に立ち向かう『テプン商事』です。三作を比べると、肩書きは立派でも、対人関係では思いどおりにいかない人物という共通点が見えてきます。
最初に知りたい三作
王位と恋の間で
『赤い袖先』は、後に朝鮮王朝第22代王となるイ・サンと、宮女ソン・ドギムの関係を描く時代劇です。ジュノさんがサンを、イ・セヨンさんがドギムを演じています。宮廷という場所では、誰かを好きになる気持ちにも、身分や将来の立場が関わります。
サンは自由に生き方を選べる青年ではありません。王位を継ぐ者としての責任があり、好意を向ける相手にも影響を与えます。この役に注目するときは、恋心の強さだけでなく、権力を持つ人物が相手の意思とどう向き合うかを追うと、二人の距離を考えやすくなります。
相手を大切に思うことと、相手が望む人生を理解することは同じではありません。ドギムにも自分の生活や大切にしたいものがあるため、サン側の感情だけでは関係を捉えきれないのが本作の面白さです。二人の立場の違いを意識すると、恋愛場面にも別の重みが加わります。
笑顔がつなぐ恋
2023年の『キング・ザ・ランド』では、ホテルを経営する一族の御曹司ク・ウォンを演じました。作り笑いを嫌うウォンが、仕事では笑顔を欠かせないホテル従業員チョン・サランと出会う物語です。サラン役はユナさんが務めています。
この設定では、同じ笑顔でも、受け取る側と仕事として見せる側で意味が異なります。ウォンの好みだけでは、サランが置かれた職場の事情を理解できません。身分差のある恋として楽しみながら、働く相手を一人の人として知っていく過程にも目を向けたい作品です。
『赤い袖先』との違いは、現代の職場を舞台に、恋愛とコメディを組み合わせていることです。どちらも社会的な立場を持つ男性ですが、サンが向き合う宮廷の規範と、ウォンが向き合うホテルでの人間関係は違います。同じ「地位の高い男性」とひとまとめにせず、相手との距離が変わる理由を比べると楽しめます。
未経験からの出発
2025年の『テプン商事』では、カン・テプン役を務めました。舞台は1997年の韓国。経済危機に直面するなか、父が築いた貿易会社を背負うことになる青年の成長を描きます。ここでの出発点は、完成された経営能力ではありません。
肩書きが社長になっても、会社を維持するための経験や信用がすぐに身につくわけではない。テプンは、その隔たりを抱えて仕事に向き合います。キム・ミンハさん演じるオ・ミソンをはじめ、職場の人々との関わりが、個人の成長と会社の問題を結び付けていきます。
御曹司役から続けて見るなら、受け継いだものの大きさよりも、受け継いだ後に何が求められるかに注目するのがおすすめです。『キング・ザ・ランド』と『テプン商事』では、会社の規模も時代の状況も異なります。その差が、主人公の選択や周囲からの期待にも表れます。
出演作をさかのぼる
若い弁護士の立場
主要な出演歴をさかのぼると、2016年の『記憶~愛する人へ~』があります。ジュノさんは若手弁護士チョン・ジン役で出演しました。イ・ソンミンさんが演じる弁護士パク・テソクを中心に、仕事や家族、過去との向き合い方を描くドラマです。
後年の主演作を知ってからこの作品を見ると、物語の中心を担う人物のそばにいる役として、別の位置から出演歴をたどれます。主演かどうかだけで作品を分けず、主人公とどのような関係を持つ役なのかを見ると、俳優の歩みを具体的につかみやすくなります。
会社でぶつかる相手
2017年の『キム課長とソ理事~Bravo! Your Life~』で演じたのは、ソ・ユルです。検事出身で、TQグループの財務理事に就く人物。ナムグン・ミンさん演じる経理課長キム・ソンリョンと対立する役どころでした。
ユルは専門知識と権限を持って会社に入ります。経験を積みながら経営を学ぶテプンとは、職場での立ち位置が対照的です。同じ会社を扱う作品でも、こちらは組織の不正をめぐる攻防にコメディが加わり、登場人物同士の衝突を楽しめます。
最初から主人公に協力する人物として見ないことが、ソ・ユルを知るうえでのポイントです。仕事の能力があることと、その力をどんな目的で使うかは別の問題。人物への印象が何によって変わるのかを追うと、対立する役ならではの面白さに触れられます。
初出演時に語ったこと
『記憶~愛する人へ~』は、ジュノさんにとって初めて本格的に出演したテレビドラマです。2017年のインタビューでは、役そのものに加え、台詞を通じて伝えようとするものが明確な作品であることにひかれたと話しています。監督や脚本家、共演するイ・ソンミンさんと仕事をすることへの思いも語られていました。
チョン・ジンについては、仕事ができる一方でそっけなく、同僚との関係も円滑ではない人物だと説明しています。先輩テソクの仕事の進め方に反感を持つところから始まるため、最初から何でも受け入れる理解者として登場する役ではありません。
この設定を知ると、チョン・ジンとソ・ユルの比較も面白くなります。二人とも法律に関わる仕事の経験を持ちますが、ジンは先輩のやり方を問い、ユルは自分の権限を使って会社に関わります。専門知識があるという共通点に対して、その知識を誰との関係で使うのかが違うのです。
若手として先輩を見る側から、理事として他の社員に影響を与える側へ。この立場の変化は、2016年と2017年の二作を続けて見ると確かめやすくなります。後の主演作で見せる役だけでなく、対立や協力を通して主人公に関わる役も、出演歴の大切な一部です。
役柄から見える魅力
ジュノさんの出演ドラマを比較すると、責任を持つ立場と、個人としての未熟さを一緒に扱う役が目に留まります。王、理事、御曹司、社長という言葉だけを並べると似て見えますが、役に与えられた能力や、動かせる範囲はそれぞれ違います。
イ・サンには将来の王としての立場があり、ソ・ユルには実務の能力があります。ク・ウォンは従業員との関係を築いていき、カン・テプンは会社を担う経験を積む必要があります。何ができる人物で、何をまだ知らないのか。この二つを分けて考えると、作品ごとの違いがはっきりします。
恋愛作品では、相手が主人公の希望にそのまま応えてくれるわけではない点も見どころです。ドギムにもサランにも、自分の仕事や暮らしがあります。相手役の人生に目を向けながら見ることで、ジュノさんが演じる人物の言動を、別の角度から受け止められます。
一方、仕事を扱う作品では、主人公一人の決意だけで状況は変わりません。会社には同僚や上司、取引に関わる人々がいます。本人の成長と、周囲から信頼されることの間にある違いを追うのも、出演作を横断して楽しむ方法です。
受賞歴が示す節目
『赤い袖先』は、ジュノさんのドラマ出演歴を知るうえで、受賞の面でも欠かせない作品です。2022年の第58回百想芸術大賞では、テレビ部門の男性最優秀演技賞を受賞しました。同年のTikTok人気賞も受賞しています。
日本の作品公式サイトでは、2021年MBC演技大賞でのミニシリーズ部門男性最優秀演技賞と、イ・セヨンさんとのベストカップル賞も紹介されています。受賞結果を知ってから見る場合も、評価の理由を先に決めつけず、サンとドギムそれぞれの立場を追いながら作品に触れるとよいでしょう。
時代を変えて見比べる
ここで挙げたドラマには、朝鮮王朝、1997年、現代という異なる時代が登場します。どの人物にも仕事や立場がありますが、相手に考えを伝える方法も、社会から求められる責任も同じではありません。時代の違いを押さえると、似た恋愛の場面にも別の条件があることが分かります。
たとえば、王位に関わるサンの選択には身分の問題があり、経済危機に直面するテプンの選択には会社を存続させる問題があります。人物の勇気や優しさだけを評価するのではなく、何を失う可能性がある選択なのかを考えると、それぞれの物語をより具体的に追えます。
次に見る作品の選び方
宮廷の人間関係と恋愛をじっくり味わいたいなら、『赤い袖先』から。現代を舞台にした恋愛とコメディを楽しみたいなら、『キング・ザ・ランド』が入り口になります。同じ俳優を軸にしても、求める物語の雰囲気から選べます。
仕事の場で生まれる対立が好きなら、『キム課長とソ理事~Bravo! Your Life~』へ進むと、主人公とぶつかるジュノさんに出会えます。その後に『テプン商事』を見ると、経験のある理事と、責任を負ったばかりの社長という違いを楽しめます。
『テプン商事』からジュノさんを知った方は、テプンのような青年像だけに限定せず、時代も職業も違う一作を選んでみてください。誰を守りたいのか、何を学ばなければならないのか。人物ごとの課題に目を向けると、次の作品で出会うジュノさんの役柄が、より鮮明になります。
