『アスファルトの男』兄弟と野心と挫折を描いた90年代韓国ドラマの傑作

夜のアメリカ・ユタ州、雪原が淡く月光に照らされている中、主人公カン・ドンソクが凍えるような風を背にレーサーカーのヘルメットを握り締める。その瞳には焦燥と憧憬が交錯している。この雪のラリーのシーンこそが、アスファルトの男が持つ魂の叫びを体現している場面です。なぜなら、この瞬間がすべての夢と挫折が交差する地点であり、自動車産業、兄弟愛、野心と犠牲とがクルマの轟音と共に燃え上がる劇のコアだからです。

裏テーマ

アスファルトの男は、表面上はクルマをめぐる夢と恋と競争の物語です。しかしその奥には、1990年代の韓国が経験した急速な産業化と経済成長の陰で置き去りにされた人々の意識が隠れています。家族のきずな、社会的地位、国産産業へのプライドと外資や海外スタイルとの葛藤が、主人公たちの行動や選択を通じて描かれます。さらに、兄弟それぞれのアメリカへの憧れと挫折というパラドックスを通して、グローバル化が若者たちに突きつけるアイデンティティの問題も浮き彫りになっています。

制作の裏側のストーリー

このドラマは、韓国TVドラマとして当時珍しかったオールフィルム、オールロケーションによる撮影が行われました。アメリカ・デスバレーやユタ州の雪原、シカゴなど、海外ロケに45日ほど使われたパートがあり、撮影スタッフは酸素の薄い高地で苦しむこともありました。原作は漫画家ホ・ヨンマンの同名マンファ。脚本はパク・ヒョンジュ、演出はイ・ジャンス。出演者にはイ・ビョンホン、チェ・ジンシル、チョン・ウソン、イ・ヨンエ、ホ・ジュノと後に韓流を牽引する実力派揃いが集まりました。

キャラクターの心理分析

カン・ドンジュン(イ・ビョンホン)はデザイナーという創造者としての夢を胸に持つが、父親の期待と現実の産業の壁に挟まれて揺れ続けています。彼の心の深くには国産でいいものを、自分は認められる存在だという自己肯定とプレッシャーが同居しています。

弟ドンソク(チョン・ウソン)は父親との確執と兄への対抗心を持ちながらも、レースという競技を通して自分の価値を証明したいと思っています。その過程で、夢と義務、家族への愛情と自尊心の間で葛藤が生じます。

ファリョン(チェ・ジンシル)はデザイナー、ライバル、恋愛対象という三重の立場を持ち、そのプロフェッショナル性と感情の狭間で揺れる人物です。彼女がドンジュンに近づく過程には、仕事を通じての自立という女性像への探求も感じられます。

視聴者の評価

この作品を見終えた後、多くの視聴者が切なくて胸が締めつけられる、夢を追うことの喜びと代償を深く考えさせられたと述べています。また映像の美しさ、ロケーションの迫力、俳優たちの若き日の熱演が印象に残るとの声が多くありました。

海外の視聴者の反応

日本をはじめアジア圏のファンからは、豪華キャストとクルマを通じての兄弟や家族ドラマの組み合わせが魅力だという評価が高いです。SNSでは、イ・ビョンホンやチョン・ウソンの演技が若くして躍動している点を称賛する投稿が多く見られます。英語圏のレビューでも、過去の作品ながら普遍的な夢と苦悩が描かれており、今観ても色あせないという感想が寄せられています。

ドラマが与えた影響

放送当時、この作品は韓国国内で自動車産業への関心をドラマファンにまで広げるきっかけのひとつになりました。また、若手俳優たちのキャリアにとって重要なマイルストーンとなり、イ・ビョンホンやチョン・ウソン、イ・ヨンエなどがその後国際的に高く評価される道を歩む上で、若き日の熱意と演技の素地を示す作品として語り継がれています。

視聴スタイルの提案

休日の午後、集中して一気に見るのがおすすめです。時間を忘れて兄弟の夢や葛藤、愛、挫折をじっくり追いたい時に最適です。また、夜ひとりで静かな部屋で見ると、車のエンジン音や雪原の風景、静かな対話の重みが心に染みます。

あなたはこのドラマでどのキャラクターに共感しましたか? ドンジュンの夢? ドンソクの反発? ファリョンの葛藤? あるいは、あなた自身が挑戦を選ぶなら、この作品のどの瞬間が背中を押してくれると思いますか? また、アスファルトの男のように、夢、産業、家族が交錯するドラマでおすすめの作品をご存じなら教えてください。

データ

放送年1995年
話数16話
最高視聴率32.0% (韓国)
制作ホ・ヨンマン(原作マンファ)、Hyundai(提供)など
監督/演出イ・ジャンス
脚本パク・ヒョンジュ
俳優名役名
イ・ビョンホンカン・ドンジュン
チョン・ウソンカン・ドンウク
チェ・ジンシルオ・ハリョン
イ・ヨンエカン・ドンヒ
ホ・ジュノハン・ギス
チョン・ウクハン会長
チョ・ミンスペ・ジョンオク
カン・ナムギルペ・ジョングク
キム・スミナターシャ
キム・スジソンヒ
イ・ジョンギルソン社長(ソン・ギジュン)
パク・ヒジンマカオ・リー
キム・ヨンゴンハン部長
ヤン・ヒョンウクオ代理
イ・ギョンアミソン
イ・サンチョルピョンシク
チェ・サンフンハン理事
ピョン・ヒボンマイケル / サニー
パク・サンウォンシェリー
ソン・ジェホジミー
ソン・ジェホオ・チャングン

© 1995 SBS