アン・ボヒョンさんは、主人公の前に立ちはだかる人物から、恋に不器用な青年、悪に挑む検事や刑事まで演じてきた韓国の俳優です。代表作の入り口には、『軍検事ドーベルマン』『ユミの細胞たち』『財閥×刑事』が挙げられます。強い相手に挑む物語と、身近な恋愛を描く物語を見比べられる3作品です。
『梨泰院クラス』の悪役で知った人は、その後の役柄の違いに注目すると、出演作を選ぶ楽しみが広がります。同じように力や立場を持つ人物でも、それを誰のために使うかで物語の意味が変わることが、この俳優のドラマをたどる手掛かりになります。
最初に見たい代表作
正義を選び直す検事
2022年の『軍検事ドーベルマン』で演じるのは、軍検事ド・ベマンです。もともとはお金や出世を重視していた人物ですが、チョ・ボアさん演じる新任の軍検事チャ・ウインとの出会いを通して、軍内部の不正と向き合うことになります。
最初から揺るぎない正義感を備えた主人公として登場するわけではありません。そのため、何を知り、誰と関わったことで行動が変わるのかが重要になります。ベマンの強さだけでなく、その力の使い道が変わっていく過程を追う作品です。
軍隊には厳しい上下関係があり、法を使って真実を明らかにすることにも障害が生まれます。主人公側が強ければ簡単に解決できるという構図ではなく、権限や立場を持つ相手にどう挑むかが、アクションと法廷劇を結び付けています。
2023年に公開された公式インタビューでは、アン・ボヒョンさんは初主演への重圧を感じたことを語っています。同時に、監督から役の強さに合う存在として思い浮かべてもらったことへの感謝も伝えていました。俳優として作品の中心を担う節目を知る上でも、押さえておきたい一作です。
復讐をきっかけに人が変わっていく物語や、立場の異なる二人が協力する展開が好きな人に向いています。ベマンとウインの目的の違いを意識すると、二人が同じ方向へ進むことの意味が見えやすくなります。
恋に不器用なク・ウン
2021年の『ユミの細胞たち』では、キム・ゴウンさん演じるユミと恋を育てるク・ウン役を務めます。現実の男女のやり取りと、その内面で動く細胞たちの世界を組み合わせたラブコメディです。
この作品では、相手を好きだという気持ちだけで、すべてがうまく伝わるわけではありません。自分の考えと相手の受け止め方にはずれがあり、言葉にするかどうかでも関係が変化します。ク・ウンは、ユミ側から見える姿と、彼自身の内面の両方に関心を向けて見たい人物です。
大きな事件を解決する主人公とは違い、ここで問われるのは、隣にいる相手とどう付き合うかという身近な問題です。相手の気持ちを察する難しさや、自分の都合をうまく説明できないもどかしさが、細胞たちのユーモアと一緒に描かれます。
アン・ボヒョンさんの恋愛ドラマを初めて見るなら、この作品が分かりやすい入り口です。2022年の『ユミの細胞たち2』にも出演しており、ユミの人生が次へ進む中で、ク・ウンがどのような位置にいるのかを続けて見られます。
財力を使う型破り刑事
2024年の『財閥×刑事』では、財閥3世のチン・イスを演じます。思いがけず警察の捜査チームに加わり、豊富な資金や人脈を事件解決に持ち込む人物です。パク・ジヒョンさん演じるイ・ガンヒョンが、捜査のパートナーになります。
イスの魅力を考えるときは、警察の常識から外れた人物が、その組織に入るという設定が鍵になります。通常の捜査の積み重ねを大切にする側と、使える手段を大きく広げてしまう側。その違いが、仕事をする上での衝突と協力を生みます。
『軍検事ドーベルマン』にも、お金や権力と正義の関係が登場します。ただしベマンは、自分の目的を見直していく人物。イスはすでに持っている資源を、事件に挑む手段として使う人物です。似た言葉で説明できる設定でも、主人公の出発点は違います。
緊張感のある事件ものの中にも、軽快さや型破りな発想を求める人に向く作品です。強い主人公の活躍だけでなく、チームの中でどう居場所を作るかという観点からも楽しめます。
悪役から広がった役柄
アン・ボヒョンさんは1988年5月16日生まれ。公式プロフィールには2014年からのドラマ出演歴が掲載されています。長く出演経験を重ねる中で、2020年の『梨泰院クラス』では、主人公の人生に大きな影響を与える長家の長男を演じました。
『梨泰院クラス』は、パク・ソジュンさん演じる青年と仲間たちが、ソウルの梨泰院で店を開き、大きな相手に挑む物語です。アン・ボヒョンさんが演じる側は、その挑戦を応援する人物ではありません。主人公への共感が強くなるほど、対立する側の存在が重くなる構図です。
この役から『財閥×刑事』へ進むと、恵まれた家の人物という共通点がありながら、物語の中で果たす役割が変わることが分かります。地位や資産という設定だけで人物を判断せず、目の前の相手にどう接するかを見ることが大切です。
2021年の『マイネーム: 偽りと復讐』では、麻薬捜査に携わる刑事を演じています。父を失った女性が復讐のために警察へ入り込む物語で、ハン・ソヒさん演じる主人公との関わりが重要になります。
Netflixが公開した紹介でも、『梨泰院クラス』で主人公を苦しめた役から、『マイネーム: 偽りと復讐』では主人公に寄り添う役へという違いが取り上げられています。善悪の立ち位置が変わる二作を組み合わせると、同じ俳優でも観客が人物に抱く距離が変わることを実感しやすいでしょう。
強さの向きを見比べる
出演作に共通する要素として、強さを持つ人物を多く演じていることが挙げられます。ただ、その強さが人を追い詰めるのか、守るのか、事件を動かすのかは作品によって異なります。体を使うアクションがあるという共通点だけでは、役の違いを十分に説明できません。
ベマンの場合は、目的を変える過程が中心になります。イスの場合は、組織の中で自分の方法がどう受け止められるかが重要です。『マイネーム: 偽りと復讐』では、相手の秘密や目的を知らない状況で、どう関わるかが人物関係の緊張につながります。
一方、ク・ウンは恋愛の中で理解し合う難しさを担う人物です。事件ものからこの役へ進むと、勝つことや真相を突き止めることでは整理できない関係に出会います。何を解決すべき物語なのかが変わるため、異なるジャンルを続けて見る面白さがあります。
評価と主演への歩み
公式プロフィールで確認できるドラマの評価には、2024年SBS演技大賞のミニシリーズ・ジャンル/アクション部門男性最優秀演技賞があります。犯罪やアクションを含むドラマで活動を広げてきた歩みと合わせて知っておきたい受賞歴です。
ただ、出演作を選ぶ際には、賞の数よりも自分が見たい人物像を基準にすると楽しみやすくなります。主人公側に共感して見たいのか、対立する人物にも関心があるのか、日常的な恋愛を見たいのか。アン・ボヒョンさんの作品には、それぞれに合う入り口があります。
2026年の出演作
2026年10月25日時点で確認できる近年の出演作には、『スプリング・フィーバー』と『財閥×刑事』シーズン2があります。同じ年の作品でも、町でのロマンスと警察での捜査という違った舞台を選んでいます。
『スプリング・フィーバー』は2026年1月に配信が始まったロマンティックコメディです。演じるソン・ジェギュは、田舎町の学校に通う甥の保護者。イ・ジュビンさん演じる教師ユン・ボムと出会い、物語が動きます。
ジェギュは、町での騒動から周囲に誤解されやすい一方、ボムの心を温めていく人物として設定されています。捜査や復讐を軸にした役とは異なり、相手がもう一度喜びを感じるようになる過程に関わる役です。温かな恋愛ドラマを求める人には、近年の出演作から選べる候補になります。
『財閥×刑事』シーズン2は2026年8月に配信が始まり、チン・イス役を続投しています。警察での訓練を経たイスの前に、かつての教官チュ・ヘラが新たなチームリーダーとして現れます。チョン・ウンチェさんが演じるヘラとの関係が、新しい捜査の軸になります。
最初のシーズンで警察に飛び込んだ人物が、経験を積んだ後に誰と組むのか。同じ役を続けて見ることで、人物の変化と変わらない個性の両方に注目できます。前作の設定が気に入った人には、続けて見る楽しみがある作品です。
好みから選ぶ次の一作
悪に挑む主人公と復讐劇なら『軍検事ドーベルマン』、恋愛のすれ違いを身近に感じたいなら『ユミの細胞たち』、軽快な捜査ものなら『財閥×刑事』がおすすめです。温かな町のロマンスを見たいときは『スプリング・フィーバー』が候補になります。
『梨泰院クラス』や『マイネーム: 偽りと復讐』も組み合わせると、主人公と敵対する人物から、力を貸す人物までの違いを追えます。一つの役で受けた印象を入り口に、次は立場の異なる役へ進んでみると、アン・ボヒョンさんの出演作をさらに楽しめるでしょう。
