イ・サンイさんは、『海街チャチャチャ』の温かな先輩役から『ブラッドハウンド』のボクサー役まで、異なる関係の中で存在感を見せる韓国の俳優です。『損するのは嫌だから』では、立派な肩書きと不器用な感情の落差が笑いにつながりました。恋の相手、頼れる友人、危険をともにする相棒という役柄をたどると、その魅力が見えてきます。
『ユミの細胞たち』で演じたのは、主人公ユミの元恋人チ・ウギ。短い出演で気になった方にも選びやすいよう、代表作三つを中心に、出演歴と2026年の活動を紹介します。
海街の温かな先輩
2021年の『海街チャチャチャ』は、海辺の町コンジンで暮らし始めた歯科医ユン・ヘジンと、町の人々を助けるホン・ドゥシクの物語です。シン・ミナさん、キム・ソンホさんと共演したイ・サンイさんは、テレビ番組のプロデューサー、チ・ソンヒョンを演じました。
ソンヒョンはヘジンの大学時代の先輩で、新しい番組の撮影を通じてコンジンへやってきます。主人公の過去を知る人物が現在の暮らしに現れるため、町で芽生える恋だけでなく、学生時代から続く思いにも目を向けられる構成です。初めからすべてを説明し合う必要のない、先輩と後輩の親しさが二人の関係の土台になります。
ただ、ソンヒョンを恋のライバルという一言で捉えると、この役の楽しさを取りこぼしてしまいます。番組を作る仕事への熱意があり、町の人々と交流し、ドゥシクとも関係を築いていく人物だからです。恋愛が思いどおりに進むかどうかとは別に、その人と過ごす時間が心地よく感じられる。そんな人物像が、作品全体の温かさにもつながっています。
イ・サンイさんは放送終了時、所属事務所を通じて、撮影地とそこで出会った人々の温かさに感謝を伝えました。ソンヒョンという役を、心を癒やしたい時に思い出せる大切な経験として振り返っています。役柄だけでなく、本人にとっても記憶に残る現場だったことがうかがえる言葉です。
この作品は、イ・サンイさんの穏やかな役から入りたい方に向いています。恋の結果を急いで追うより、仕事の話をする時、ヘジンと再会する時、町の人と打ち解ける時の違いを楽しむと、ソンヒョンの人柄がより立体的に見えてきます。
拳でつながる相棒
2023年に始まった『ブラッドハウンド』では、ホン・ウジン役でウ・ドファンさんと共演しました。若いボクサーたちが、困窮する人々を食い物にする闇金組織へ立ち向かうアクションドラマです。ウ・ドファンさんがキム・ゴヌを、イ・サンイさんがその相棒となるウジンを演じます。
こちらの関係を支えるのは恋心ではなく、危険な状況で相手を信じられるかという問題です。ボクシングの試合を通じて出会った二人が、仲間として同じ方向を向くようになる。強さを競うだけの関係から、相手を守るためにも拳を使う関係へ進んでいく点が、作品を追う大きな軸になります。
ウジンを見るうえでは、アクションの迫力と、ゴヌとの会話の両方に注目したいところです。戦いの場面だけでは伝わらない親しさがあるからこそ、二人が離れずに困難へ向かうことに意味が生まれます。相棒役は主人公の行動についていくだけの人物ではなく、その決断を支え、ときには状況の受け止め方を変える存在なのです。
『海街チャチャチャ』との違いは、日常の中に居場所を作る人物から、日常そのものを脅かす力と向き合う人物へ変わることです。同じ頼もしさでも、ソンヒョンは人と打ち解ける力に、ウジンは厳しい状況でともに行動する姿に重心があります。この二作を続けて見ると、イ・サンイさんの出演作の幅をつかみやすいでしょう。
シーズン2は2026年4月3日にNetflixで配信されました。今度の相手は、金と暴力に支配された世界規模の違法ボクシングリーグです。イ・サンイさんはウジン役を続けて担当しており、一度きりの共演ではなく、同じ二人の関係を次の物語へ持ち越しています。
不器用な社長の恋
2024年の『損するのは嫌だから』で演じたポク・ギュヒョンは、企業を率いる若い社長です。作品の中心には、損を避けるために結婚式を挙げる女性と、人に迷惑をかけたくない男性の関係があります。その周囲でギュヒョンと、ハン・ジヒョンさん演じる作家ナム・ジャヨンの恋も展開します。
二人の始まりは、素直に応援できる出会いではありません。ギュヒョンが小説に書き込んだ悪質なコメントをきっかけに、作者であるジャヨンと向き合うことになります。社会的な地位があっても、自分の言葉が相手を傷つけたことから逃れることはできない。恋愛が始まる前に、まず謝罪と反省が必要になる関係です。
ギュヒョンの面白さは、社長らしい整った外見と、私的な場面で見せる心細さが一致しないところにあります。ジャヨンの行動が気になり、相手の考えを読み違え、謝ろうとしてもうまくいかない。余裕のある男性としてだけ描かれないため、恋愛の中で立場が揺らぐ様子を楽しめます。
一方で、コメディとして笑えることと、傷つけた行為が軽くなることは別です。この人物を見る時には、好意を抱くようになったという結果だけでなく、相手への接し方がどう変わっていくかに注目するとよいでしょう。不器用さの中から誠意を伝えられるかという点が、役柄を理解する手掛かりになります。
二人の組み合わせに興味を持った方には、同年のスピンオフ『社長のお品書き』もあります。こちらはジャヨンが自作の小説世界へ入り込むロマンスファンタジーで、イ・サンイさんは小説の男性主人公カン・ハジュンを演じました。同じ共演者と、現実側の不器用な社長とは異なる、物語の中の理想的な男性像に取り組んでいます。
ユミが抱える過去
2021年の『ユミの細胞たち』では、キム・ゴウンさん演じるユミの元恋人チ・ウギ役で特別出演しました。ユミの現在の恋を追う物語に、過去の恋愛を思い出させる人物として関わります。
この作品には、チェ・ミンホさん演じる会社の後輩チェ・ウギも登場します。名前に同じ「ウギ」が入りますが、イ・サンイさんのチ・ウギは元恋人で、別の人物です。出演作を調べる時に混同しやすいため、役名の姓とユミとの関係を一緒に押さえると分かりやすくなります。
チ・ウギを知ることは、ユミの新しい恋へのためらいを理解する入口にもなります。恋愛の物語では、今目の前にいる相手だけでなく、すでに終わった関係が心に残っていることがあります。出演時間の長さとは違う形で、主人公の背景を伝える役です。
信頼される人の立場
2023年から2024年に放送された『マイ・デーモン』では、ミレ投資の代表チュ・ソクフンを担当しました。キム・ユジョンさん演じるト・ドヒが頼りにする人物で、財閥の人間関係の中でも、彼女にとって近い立場にいます。
ドヒとソン・ガンさん演じる悪魔チョン・グウォンの契約結婚が物語を動かす一方、ソクフンは、以前から築いてきた信頼を持つ人として登場します。新しく現れた相手と、長く知る相手。その違いがあることで、主人公を取り巻く関係に厚みが生まれます。
ギュヒョンとソクフンはともに企業の代表という肩書きを持っていますが、役を楽しむポイントは異なります。一方は関係の悪い出発点から相手に向き合い、もう一方はすでにある信頼を土台に立っています。職業が似ていても、物語の中で担う役割は同じではありません。
舞台から続く歩み
イ・サンイさんは1991年11月27日生まれ。2014年にミュージカル『グリース』でデビューし、舞台と映像作品の両方で活動してきました。韓国語名は「이상이」、英語では「Lee Sang-yi」などと表記されます。
ドラマでは『一度行ってきました』で注目を集め、その後も恋愛劇やアクションへ出演を広げています。舞台出身だから特定の演技が得意だと決めつけるより、どんな相手との関係を受け持つ役かを見比べる方が、出演作の違いを楽しめます。
2026年10月25日時点では、『ブラッドハウンド』シーズン2の公開を確認できます。過去の代表作を紹介する時にも、シリーズの続編へ出演がつながっていることを知っておくと、最初のシーズンから見る楽しみが増すでしょう。
最初の一本を選ぶなら
温かな人間関係を楽しみたいなら『海街チャチャチャ』、相棒同士の結びつきとアクションを見たいなら『ブラッドハウンド』が入口になります。恋の失敗や気まずさを含むコメディが好きなら、『損するのは嫌だから』でギュヒョンを追うのもよい選び方です。
どの作品でも、イ・サンイさんの役を主人公との関係だけで終わらせず、その人物自身が何を大切にしているかに目を向けてみてください。仕事を楽しむ先輩、危険を分け合う友人、自分の誤りを引き受ける社長。それぞれの立場から、同じ俳優の違う顔に出会えます。
