チョン・スヨンさんは、主人公の友人や地域の住人、公務員などを演じ、韓国ドラマの人間関係を支えてきた俳優です。『ファンタスティック・カップル』のカンジャ、『ゴハン行こうよ』のパク・ギョンミ、『2度目の二十歳』のラ・ユニョンを知ると、主人公と日常を共有する人物の違いが見えてきます。
近年の出演作には、『テプン商事』もあります。友人としてそばにいる役から、仕事で向き合う相手まで。今回は、それぞれの人物が主人公とどのような関係を持つのかを軸に紹介します。
まず知りたい三作品
南海の町のカンジャ
『ファンタスティック・カップル』は、記憶を失った裕福な女性アンナが、チョルスとの出会いを通じて、それまでと違う生活を送るラブコメディです。チョン・スヨンさんは、町の住人カンジャを演じています。
カンジャは、雪を待ち望む独特の感性を持つ人物です。人や暮らしを自分の尺度で測ってきたアンナとは、世界の受け止め方が異なります。その違いが、主人公を取り巻く町の人間関係を考える手掛かりになります。
カンジャに注目するなら、恋愛の進展だけを追わず、アンナが町で誰と出会うのかにも目を向けたいところです。新しい生活は、住む場所や食べ物が変わるだけではありません。これまでなら関わらなかった相手との関係も生まれます。
ドラマの明るさを楽しみたい方や、主人公以外の住人にも関心がある方に向いた出演作です。カンジャを通じて、恋人同士の物語の周りにも、それぞれの世界を持つ人がいることを意識できます。
食卓に集まる友人
『ゴハン行こうよ』は、一人暮らしの人々と食事を組み合わせたドラマです。離婚後、一人で暮らすイ・スギョンを中心に、食べることと日々の付き合いが結び付いていきます。
チョン・スヨンさんが演じるパク・ギョンミは、スギョンの友人です。主人公とは異なる暮らしを送る友人がいることで、一人暮らしの生活も、友達との距離や会う時間と併せて描かれます。
この作品で見たいのは、特別な事件がなくても人と会う理由になる食事です。何を食べるかと同時に、誰と同じ席につくのかが関係を表します。友人という立場は、職場の同僚や近所の人とは違う形で、主人公の日常へ入っていけます。
『ファンタスティック・カップル』が大きな生活の変化から始まるのに対し、こちらは日常の積み重ねを味わえる作品です。チョン・スヨンさんの役柄も、個性的な町の住人から、主人公の生活に近い友人へと変わります。
食事を楽しむドラマや、気負わずに見られる人間関係の物語が好きな方におすすめです。料理そのものと一緒に、食卓を囲む人物同士がどのような間柄なのかも押さえると、会話の背景がつかみやすくなります。
人生の再出発を見守る
『2度目の二十歳』では、ラ・ユニョンを演じています。ユニョンは主人公ハ・ノラの高校時代からの親友で、ダンス教室を経営する人物です。
作品の中心にいるノラは、38歳で大学に入学し、これまでの生き方を見つめ直していきます。ユニョンは、新しい大学生活で初めて出会う人ではありません。ノラが若かった頃を知っているという点で、周囲の学生たちとは違う位置にいます。
公式の人物紹介では、ユニョンは学生時代から学業やダンスに秀で、意志も強い人物として描かれています。自分の仕事を持つ現在の立場と、友人の過去を知る立場が重なっている役柄です。
長い付き合いの友人がいると、主人公の変化は現在だけでは測れなくなります。今できないことだけを見るのではなく、かつてどんな夢や力を持っていたのかという見方が加わるからです。ユニョンの役割は、ノラの人生に時間の厚みを与えるところにあります。
恋愛に加えて、学び直しや大人の友情が気になる方に向いた作品です。主人公の再出発を、本人の決意だけでなく、昔からの友人との関係からも考えられます。
友人役の中にある違い
ギョンミとユニョンは、ともに主人公の友人に当たります。ただし、その関係が見せるものは同じではありません。『ゴハン行こうよ』では今の暮らしを共有すること、『2度目の二十歳』では過去を知る相手がいることに注目できます。
同じ「友人役」という説明だけでまとめると、この違いは見落とされがちです。誰のどの時期を知っているのか、日常のどこで交わるのかを確かめると、人物が物語に必要な理由が分かります。
また、主人公を知る友人は、恋人や家族と違う視点を持てる人物でもあります。関係の近さだけでなく、その立場から何が見えるのかを考えると、脇にいる人物を追う面白さが広がります。
印象を変える役作り
チョン・スヨンさんは、『僕の妻はスーパーウーマン』で、ヒロインのチョン・ジエの友人チ・ファジャを演じています。ファジャは、自分に霊的な力があると信じている巫女という設定です。
2009年のインタビューでは、カンジャとファジャの声の高さを変えたことを、本人が説明しています。カンジャでは普段より高く、ファジャでは低く設定したという話です。これは、役柄が違うだけでなく、人物を区別するための具体的な工夫があったことを示しています。
同じ取材では、個性を強くすることそのものより、ドラマ全体の中で人物が適切な位置を占めているかを考える姿勢も語っています。役の目立ち方と、作品の中で果たす役割を一緒に意識している点が興味深いところです。
こうした発言を知った上で作品を見ると、単に「個性的な友人」と受け止めるだけでなく、どんな人物として作られているのかを確かめる楽しさが生まれます。声や表情の印象を自分で見比べたい方には、カンジャとファジャの二役が候補になります。
公務員として向き合う
2025年の『テプン商事』では、長年勤めてきた公務員のチャ主査役で出演しています。ソウル地方調達庁の外資課の職員として、主人公たちの仕事と関わる人物です。
この役では、親しい友人として相手を知っているわけではありません。会社に対して慎重な姿勢を取る仕事上の相手として登場します。テプンたちにとっては、自分たちの事情や熱意を、社外の人にも伝える必要がある場面につながります。
『2度目の二十歳』のユニョンが主人公の過去を知る人物なら、チャ主査は仕事の場で相手を見定める人物です。既に信頼関係がある相手と、これから理解を得なければならない相手。その違いを意識すると、同じ俳優の役柄を別の角度から捉えられます。
会社を立て直す物語を、経営者と従業員だけでなく、外部の相手との関係まで含めて見たい方に向いた出演です。職場の中の結束が、そのまま外の信用になるとは限らない点に注目できます。
市役所で働く友人役
2009年の『シティーホール』でも、主人公の友人役を務めています。演じるチョン・ブミは、市役所で働く公務員です。下級公務員のシン・ミレが、地方政治に関わっていく物語の中に登場します。
ブミの場合、友人という私的なつながりに、公務員として働く立場が重なっています。『ゴハン行こうよ』の食卓や、『2度目の二十歳』の学生時代からの関係とは、主人公と交わる場所が違います。
市役所は人が働く職場であると同時に、市民の生活に関わる組織でもあります。そのため、主人公の仕事が変化するときには、個人の問題と公共の問題が近い距離にあります。ブミを知ることは、ミレの周囲にいる働く人々へ目を向ける入り口になります。
地方政治と恋愛を組み合わせたドラマが気になる方に向いた出演作です。市長や副市長といった肩書だけでなく、同じ職場で働く人や友人の立場から物語を見ると、主人公が誰とつながっているかを把握しやすくなります。
公務員の役という点では、『テプン商事』のチャ主査とも比較できます。ただし、ブミは主人公の友人としての関係も持ち、チャ主査は会社と仕事で向き合う相手です。同じ職種でも、相手との距離によって物語の役割が変わります。
出演作を年代でたどる
チョン・スヨンさんの出演作には、2006年のカンジャ、2009年のファジャやブミ、2013年に始まった『ゴハン行こうよ』のギョンミ、2015年のユニョンというつながりがあります。そこから2025年のチャ主査まで、異なる時期のドラマを見比べられます。
役柄を年代順に並べると、同じ友人役や公務員役があっても、まったく同じ設定を繰り返しているわけではないことが分かります。町の人、食事を共にする相手、昔を知る親友、行政の仕事で向き合う相手という違いが残ります。
古い作品からすべて追うより、気になった関係を入り口に選ぶのもよいでしょう。ひとつの役を知ってから別の作品へ進むと、共通点に加えて、何が違っているのかも見つけやすくなります。
気になる関係から選ぶ
町の住人まで含めたラブコメディを楽しみたいなら『ファンタスティック・カップル』、食事と日々の交流が気になるなら『ゴハン行こうよ』が入り口になります。大人になってからの学び直しや、長く続く友情を見たい方には『2度目の二十歳』がおすすめです。
もう少し役の違いを比べたくなったら、『僕の妻はスーパーウーマン』と『テプン商事』へ進めます。友人と仕事の相手、独特の感性を持つ人物と職務で相手に向き合う人物という、関係の幅が見えてきます。
チョン・スヨンさんの出演作をたどると、主人公の人生は周囲の人々との関係で形作られていることに気付きます。まず好きな物語を選び、そこにいる友人や職場の相手にも目を向けてみてください。
