キム・ヘスクさんは、主人公を支える母親や祖母から、王宮の秩序を動かす大妃、怪力で悪に挑むヒーローまで演じる俳優です。『冬のソナタ』のユジンの母を思い浮かべる方も、近年の出演ドラマを比べると、家族の年長者という立場の中にある大きな違いに気づくでしょう。
親や祖母であることは共通していても、家族を応援するのか、自らの価値観で動かそうとするのか、自分の人生も楽しむのかで人物像は変わります。ここでは三つの代表作を入口に、役柄の違いと次に見る作品の選び方を紹介します。
三つの役から知る
若者を支える祖母
2020年の『スタートアップ: 夢の扉』では、ソ・ダルミの祖母チェ・ウォンドクを演じています。起業を目指す若者たちの挑戦と成長を描く作品で、ウォンドクはダルミの生活と気持ちを支える人物です。
ホットドッグを売って生計を立ててきたウォンドクは、企業の大きな資金を動かす経営者とは異なる場所にいます。孫が新しい事業の世界へ踏み出す物語の傍らに、毎日の商売を積み重ねてきた祖母の暮らしがあるという対比が生まれます。
若者が自分の可能性を証明しようとするとき、成績や成果だけでは測れない居場所も必要になります。ウォンドクに注目すれば、成功するかどうかという競争の外側に、ダルミを気にかける関係があることを確かめられます。
人物紹介では、客にも気持ちを向け、困っている相手に手を差し伸べる女性として描かれています。その設定からは、祖母としての優しさと、商売を続けてきた生活者としての姿を切り離さずに捉えることができます。
仕事や恋愛を通じた若者の成長に加え、その挑戦を支える家族の存在も楽しみたい方に合う作品です。キム・ヘスクさんが演じる、身近な暮らしに根を張った人物から入りたい方にも向いています。
『シュルプ』
2022年の『シュルプ』で演じるのは、国王イ・ホの母である大妃です。王妃ファリョンが息子たちを守り、王室の教育競争や後継者を巡る問題に向き合う時代劇で、大妃は王妃と対立する位置に立っています。
同じ家族でも、王宮では誰が母で、誰が王妃で、誰が王の母なのかによって権限が変わります。子どもを思う感情と王室の序列が重なっているため、家庭の中の意見の違いが、政治的な意味まで持つ設定です。
ウォンドクが若い世代を支える人物なら、大妃は若い世代とその母親に圧力を与える人物として見ることができます。家族の年長者という共通点があるからこそ、その人の価値観が周囲にどのように働くかという違いが際立ちます。
この作品を初めて見る方は、王子たちの競争だけでなく、母親たちが何を守ろうとしているのかを整理すると理解しやすいでしょう。キム・ヘスさんが演じる王妃と大妃の関係は、その対立を知る重要な入口になります。
宮廷の人間関係や、親の期待が子どもに及ぼす影響に関心がある方におすすめできます。優しい母親役の印象が強い方には、同じ家族という枠の中でも、違う側面を見せる出演作です。
怪力を持つ祖母
2023年の『力の強い女 カン・ナムスン』では、ナムスンの祖母キル・ジュンガン役を担当しました。生まれつき超人的な力を持つ三世代の女性が、犯罪に立ち向かうコメディです。
ジュンガンは精肉業で財を築いた経歴を持ち、引退後は別の価値ある活動を探しています。年長者をだます人々の存在を知り、自分の力を悪事に向けようとする設定で、守られる側に収まらず行動する人物です。
見どころは怪力だけではありません。ジュンガンには自分の恋もあり、孫の物語を見守るだけの祖母ではない人生が描かれます。三世代が同じ力を受け継いでいても、関心や経験は同じではないという点に目を向けられます。
非現実的な能力を楽しみながら、年齢や続柄で人物の可能性を限定しないドラマを見たい方に合います。『スタートアップ: 夢の扉』と見比べるなら、祖母が若者の背中を押す役から、自らも物語を動かす役へ変わることが、分かりやすい比較点です。
アクションと恋愛、家族の関係を一緒に楽しめるため、静かな家族劇とは違う気分でキム・ヘスクさんの出演作に触れたい方にも選びやすい一本です。
母親役をたどる
2002年の『冬のソナタ』では、ユジンの母イ・ギョンヒを演じています。主人公たちの初恋と再会を描く物語には、親世代のつながりも関わっており、母親たちは若者の恋を外から眺めるだけの存在ではありません。
ユジンの側にいる家族を意識すると、本人が抱える思いと、母が知っている過去を分けて考えることができます。恋愛の当事者と親世代では、同じ人物を見る際にも異なる記憶や立場があるのです。
2020年に始まった『賢い医師生活』では、医師アン・ジョンウォンの母チョン・ロサを担当しました。病院で働く医師たちの友情や日常を描く中で、ロサは、子どもが成人して専門職に就いた後も続く親子関係を示します。
ジョンウォンの将来について思うところがある一方、ロサ自身にも、長年の友人チュ・ジョンスとの関係があります。医師の母という役名だけで捉えると見落としがちですが、子どもの生活とは別に、自分が頼れる相手を持っている人物です。
若い主人公の母から祖母、そして王の母へと、ここで取り上げた役は世代や環境を変えています。年代順に追うだけでなく、家族の中でどの程度の距離や権限を持つ人物なのかを比べると、出演歴に具体的な輪郭が生まれます。
家族の外のつながり
『賢い医師生活』は2020年の第1シーズンに続き、2021年には第2シーズンが制作され、チョン・ロサも引き続き登場します。長く続く親子や友人の関係を味わいたい方には、シリーズを通じて同じ人物を追えることも選ぶ理由になります。
『賢い医師生活』のロサとジョンスは、長い年月を共にしてきた友人です。親子のやり取りとは異なり、自分と近い立場の相手に気持ちを伝えられる関係が、年長の登場人物にも用意されています。
韓国の媒体マネートゥデイに掲載されたコラムでも、この二人の友情は、物語を若い医師たちの恋愛だけに閉じない要素として取り上げられました。これは出演時間や人気の順位ではなく、作品の中で年長者の生活を描く意義に注目した評価です。
ロサを見ながら、母親は子どもの問題だけを考えて暮らしているわけではないと捉えると、他の役との違いも整理しやすくなります。家族といるとき、友人といるときに持つ関係の違いそのものが、人物を知る材料になります。
対立を生む人物への評価
『シュルプ』の放送開始時、聯合ニュースは、キム・ヘスクさんが演じる大妃の落ち着いた話し方と近づきにくい印象に言及し、王妃との対話が緊張を生むと評しています。これは報道された批評として、穏やかな語り口と人物の厳しさが両立する役への見方を示すものです。
この評価を踏まえると、大きく声を張る人物だけが強いわけではないという視点で、大妃を捉えられます。発言する人がどの地位にいるか、その言葉を誰が受け止めるのかによっても、会話の重みは変わるからです。
『スタートアップ: 夢の扉』のウォンドクと比較するなら、家族の中心にいる女性の影響力が、応援にも圧力にもなることが分かります。年長の女性という一つの印象でまとめず、主人公の行動に何をもたらすかを見たいところです。
本人が語る新たな挑戦
『力の強い女 カン・ナムスン』の制作発表で、キム・ヘスクさんは、アクションと恋愛の両方に挑戦できたことを語っています。ワイヤーを使うアクションについても、予想していた以上に楽しかったと振り返りました。
さらに、母や祖母と呼ばれる人物にも一人の女性としての人生があることを示せる点にひかれた、と説明しています。ジュンガンの恋や自発的な行動は、役の設定だけでなく、本人が作品を選ぶ際に感じた魅力とも結びついています。
一方、『スタートアップ: 夢の扉』で共演したペ・スジさんは、撮影当初からキム・ヘスクさんとの関係を、友人のようでも母のようでもあると表現していました。ダルミが祖母に深く頼る設定を、共演者がどのように受け止めていたかが分かる言葉です。
これらはそれぞれの作品について語られた発言です。すべての母親役を同じ方法で演じているという説明ではなく、家族の親密さを支える仕事と、本人の人生を前に出す役の両方に触れられる背景として読むとよいでしょう。
好みに合う作品選び
温かな家族のつながりを入口にするなら『スタートアップ: 夢の扉』、子どもが大人になった後の親の生活にも関心があるなら『賢い医師生活』が候補です。仕事の物語の中に、職場だけでは完結しない人間関係がある点を楽しめます。
厳しい対立と宮廷の序列を味わいたい方には『シュルプ』が向いています。反対に、三世代が力を合わせる活躍や年長者の恋を楽しみたいときは、『力の強い女 カン・ナムスン』を選ぶと、祖母役の違った広がりに出会えます。
『冬のソナタ』でキム・ヘスクさんを知った方は、母親が物語の中で何を望み、どこまで自分の人生を持っているかを比べてみてください。若い世代との関係に加えて、本人の友人や仕事にも目を向けると、役柄の差がよりはっきりします。
キム・ヘスクさんの出演作をたどる楽しさは、家族の年長者にも異なる価値観と希望があると知ることです。寄り添う姿、対立する立場、自分から動く人生のうち、今心が向くものから次の一本を選べます。
