『油っこいロマンス』挫折から始まるシェフと令嬢の恋の行方

油っこいロマンス

油っこいロマンスが特に印象に残るのは、スターシェフ ソ・プンが自分の過去と向き合いながらジャージャー麺(韓国語でジャージャンミョン)を作る場面です。彼が高級ホテルの地位を失い、裏切りや挫折を経験したあと、荒れた町の中華料理店で再起を誓うその瞬間は、視聴者に深い共感を呼びます。鍋から立ち上る湯気、油のはねる音、濃い味噌だれの匂いまで想像させる料理シーンが主役とヒロイン、そしてヤクザ出身の店主チルソンの交錯する運命を象徴する劇的な一幕です。このシーンはただのロマンス以上に、誇り・再生・裏切り・愛が絡み合う人生の再構築を感じさせ、続きを見たいと強く思わせる導入部です。

裏テーマ

油っこいロマンスは、単なる恋愛や料理ドラマ以上のものです。現代社会における競争、格差、名誉、挫折の問題を映し出しています。主人公ソ・プンはキャリアと信頼を失うことで、自分のアイデンティティが何であったのかを問い直す過程に入ります。大企業や高級ホテルで成功することだけが評価ではない、誠実に生きること、情熱を持って仕事をすることの意味が問われます。また、ヒロイン タン・セウは財閥令嬢としての生活を突然失い、社会的地位の喪失や家庭の崩壊を経験します。こうしたプロットは韓国社会の階級・家族への期待・外見や成功に対するプレッシャーを反映しています。ヤクザ出身の中華料理店経営者チルソンのキャラクターを通じて、アウトサイダーであることの苦悩とそこからの再生可能性も描かれます。

制作の裏側のストーリー

脚本は嫉妬の化身~恋の嵐は接近中!~などで知られるソ・スクヒャンが手掛け、演出には嫉妬の化身やあやしいパートナー~Destiny Lovers~といった作品で評判のパク・ソンホとハム・ジュノが参加しています。

撮影時には中華料理の調理シーンに本物感を出すため、キャストが実際に料理の鍋を扱い、高温の油や湯気を使った演出も敢行されたといいます。ソ・プン役のジュノ(2PM)は、料理人としてのリアルな動きを重視し、鍋を振る動きなどアクション的な要素も取り入れて演技に励みました。

また、放送回数に関しては当初20回放送の予定でしたが、選挙やワールドカップ中継の影響で全19話に短縮された経緯があります。

キャラクターの心理分析

ソ・プンは高級中華料理店の副料理長という地位と、それに伴うプライドを持っていました。彼にとって料理は自身の価値の象徴です。しかし、裏切りや地位の喪失によってその象徴が崩れると、自分の存在意義も揺らぎます。プンが荒れた中華料理店で再び鍋を握るのは、失われた誇りを取り戻したいという願いの現れです。

タン・セウは家族・財産・地位を突然失う経験を通じて、自分とは何かを再定義せざるを得ません。良家の令嬢というラベルが剥がれた後の彼女の行動は、見栄や期待ではなく、自身の本当の幸せを探す軌跡です。セウが選ぶ選択肢は恋か逃避かではなく、自立と自己決定に根ざすものです。

ドゥ・チルソンはかつて悪者のレッテルを貼られた人物ですが、実際には情に厚く、自分なりの正義感を持っています。彼は裏社会との接点を持つものの、自分と仲間たちのために人としての尊厳を守ろうとします。彼の経営するHungry Wok(閑古鳥が鳴く中華屋)の再生は、彼自身の再生にも通じます。

視聴者の評価

このドラマを見終わった後、視聴者には切なさ・復活の希望・甘くて油っこいロマンスが心に残ります。恋愛シーンは甘く、ときには過度にロマンティックであるという声もありますが、それがこのドラマの魅力でもあります。料理の描写はリアルで視覚的にも食欲をそそるため、美味しそうでお腹が空いたという反応が頻出します。キャラクター間の緊張や裏切り、成長の物語が重なっており、単なるラブコメ以上の深みを感じる人が多いです。

海外の視聴者の反応

日本でもジュノ(2PM)×チャン・ヒョクという豪華共演や、料理シーンのビジュアルのよさで話題を呼びました。配信サイトやレビューサイトで、予想外に引き込まれた・料理ドラマとしても楽しめた・感情の振れ幅が大きくて見応えがあったという意見が多く見られます。

アメリカや東南アジア圏の視聴者も、食文化と恋愛の融合というテーマが文化の違いを超えて共感を呼んでいます。英語字幕でもちゃんと伝わるドラマだ・料理の場面が細かくて本当に食べたくなるという感想が多く見られます。

ドラマが与えた影響

一部の中華料理店ファンやドラマファンの中で、油っこい料理やジャージャー麺などドラマに登場する料理をメニューに加える店も出てきました。ドラマロケ地や中華料理屋を訪れたいと思う視聴者が増え、韓国国内の食×観光の組み合わせとしても注目されました。

また主演のジュノ(2PM)が料理人としての役どころに挑戦したことで、アイドル出身俳優の演技の幅を広げる事例として取り上げられています。さらに、視聴者の間で料理を通じて人間関係を築く・食事とは思いを伝える手段であるといったテーマが語り草となりました。

視聴スタイルの提案

休日の夜、一日の疲れをリセットしたいときに一気見するのがおすすめです。調理・恋愛・裏切り・再生がバランスよく入っているため、ドラマに没頭したいときの密かな楽しみになります。また、一人で見るより友人や恋人と、料理シーンを語りながら見ると共感が深まります。料理を作りながら見るというながら見も楽しいかもしれません。

あなたはこのドラマでどのキャラクターにもっとも共感しましたか?ソ・プンの誇り?セウの再生への道?あるいはチルソンの義理人情?他におすすめの料理×恋愛ドラマがあれば教えてください。

データ

放送年2018年
話数全19話
最高視聴率9.3%(全国)
制作SBS、SM C&C
監督パク・ソンホ、ハム・ジュノ
演出パク・ソンホ、ハム・ジュノ
脚本ソ・スクヒャン

©SBS