雨の中、主人公ユ・ジンウ(演:ヒョンビン)が車を運転中、ゲームのサーバーが突然起動し、周囲が現実とゲームの境界が溶けるような暗闇に襲われるあのシーン。霧のような光、ノイズのように揺れる視界、そして助手席で恐怖に震えるヒロイン・チョン・ヒジュ(演:パク・シネ)の表情。現実か仮想かがあやふやになる瞬間が視聴者を引き込むきっかけです。あの場面は、このドラマがただの恋愛やSFではないことを予感させる始まりです。
裏テーマ
アルハンブラ宮殿の思い出は、ゲームと現実の境界が曖昧になる中で、人間の“責任”と“罪悪感”、そして“信頼”について問いかけるドラマです。ドラマ名は、この仮想世界とスペイン・アルハンブラ宮殿の美しさを重ねながら、それが象徴する“記憶”“過去”“再生”といったテーマを浮かび上がらせます。現代社会でテクノロジーが発展する一方で、VR/ARのような仮想空間の怖さや、それが現実に与える影響――偽りと真実の混在、現実での関係性への波及――という問題を描いています。さらに、名声・会社・権力を巡る人間関係の歪みや、過去の決断が今の自分をどう縛るかというものが静かに根底にあります。
制作の裏側のストーリー
このドラマは、脚本家ソン・ジェジョンがポケモンGOのようなARゲームから着想を得たことが明かされています。そして監督はアン・ギルホで、彼はサスペンスやミステリー要素の強い作品で名高い監督です。撮影のロケ地も見事で、スペイン・グラナダ(アルハンブラ宮殿付近)、バルセロナ、ジローナ、さらにハンガリーやスロベニアなど複数のヨーロッパ都市を舞台に使っており、風景や建築物がドラマの幻想性を深めています。キャスティングでは、ヒョンビンがテレビドラマ復帰作として注目を浴び、パク・シネとのコンビネーションも話題でした。
キャラクターの心理分析
ユ・ジンウは、才能と野望を持つCEOでありながら、過去の裏切りや罪の意識に対する強いトラウマを抱えています。ゲームの中で味わう“死”、そしてゲームが現実の人間関係を蝕む様を通じて、自分自身の存在意義や他者との信頼を問い続けます。ヒジュは、芸術家肌で愛情深く、他者に対する優しさを持つ一方で、経済的な不安や過去の家庭の喪失が心の弱さをもたらします。彼女の行動(ジンウを信じることを決めかね、涙すること、多くを背負いすぎて自分を抑えること)は、韓国社会で女性に求められる“強さと優しさを兼ね備える”という矛盾を体現しているように見えます。また、NPCエマやセジュ、秘書ソ・ジョンフンなど脇役たちも、ただのゲーム上の役割を超えて、ジンウの内面を映す鏡として機能しています。他者に裏切られた経験や信頼の危うさが、それぞれのキャラクターの決断や行動に影を落としています。
視聴者の評価
視聴後、視聴者は切なさとともに“もし自分がその立場なら…”という問いを抱くことが多いようです。ジンウがゲームの中で追うセジュを救いたいという義務感、ヒジュとの関係でもどこまで心を開くかという葛藤。静かな画面の先に広がるスペインの風景、ゲームの幻想的でありながら恐ろしい世界。驚きのどんでん返しや、幾重にも重なる謎があることで視聴者は最後まで飽きずに引き込まれます。反面、プロットの理解が難しい部分や、描写のための余白が多いと感じる視聴者も少なくなく、“難解さ”が評価を分ける要因にもなっています。
海外の視聴者の反応
日本、アメリカ、中国などからも支持を受けています。SNS上では「ゲームを現実と錯覚する描写がすごい」「ヒョンビン × パク・シネの共演が見応えある」という声が多く、日本の視聴者からはスペインの風景/建築物の美しさにもコメントが集まっています。海外のレビュープラットフォームでも、批評家・視聴者ともにそのビジュアルとテーマ性が高評価を得ています。
ドラマが与えた影響
このドラマにより、アルハンブラ宮殿をはじめとするスペイン南部の観光スポットに興味を持つ韓国やアジアのファンが増えました。ロケ地ツアーが企画されるなど、実際にアルハンブラ宮殿を訪問する動機になった人も多いようです。また、ARやVRを取り入れたエンターテインメント作品への注目が高まり、ゲームとドラマを融合させる作品の可能性を感じさせる作品として言及されることが多いです。ファッションや小物も、ドラマ内で使われたアクセサリーや衣装がトレンドになるケースがあります。
視聴スタイルの提案
このドラマの謎をしっかり追いたいなら休日の午後にまとめて視聴するのが良いです。視覚的な美しさを堪能するために、大画面テレビかモニターで観るのがおすすめです。夜、静かな時間帯に一人で集中して観ると、ゲームの不安感や主人公の孤独感がより伝わります。また、視聴後家族や友人と「もしあなたがこのゲームに巻き込まれたらどうするか」を語り合うと、ドラマのテーマがより深く心に残ります。
読者参加型の問いかけで締めくくる
あなたはこのドラマの中で、ジンウのどの決断に共感しましたか?ヒジュの信じる心や過去を背負う姿勢、どちらが印象に残りましたか?また、このような“現実と仮想の重なり”を描いたドラマを他にご存じなら、ぜひ教えてください。
データ
放送年 | 2018年〜2019年 |
話数 | 全16話 |
最高視聴率(ケーブルテレビ全国最高) | 10.025%(第14話) |
制作 | Studio Dragon/Chorokbaem Media |
監督 | Ahn Gil-ho(アン・ギルホ) |
演出 | Ahn Gil-ho |
脚本 | Song Jae-jeong(ソン・ジェジョン) |
俳優名 | 役名 |
---|---|
ヒョンビン | ユ・ジヌ |
パク・シネ | チョン・ビジュ |
パク・フン | チャ・ヒョンソク |
キム・ヨンリム | オ・ヨンシム |
チャンヨル | チョン・セジュ |
イ・レ | チョン・ミンソ |
イ・ハクジュ | キム・サンボム |
イ・シウォン | イ・スジン |
キム・ウィソン | チャ・ビョンジュン |
リュ・アベル | イ・スギョン |
イ・スンジュン | パク・ソンホ |
ミン・ジヌ | ソ・ジョンフン |
チョ・ヒョンチョル | チェ・ヤンジュ |
ハン・ボルム | コ・ユラ |
イ・ジェウク | マルコ・ハン |
パク・ジヌ | ノ・ヨンジュン |
イ・チェユン | ビジュの少女時代 |
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