『クリミナル・マインド:KOREA』トラウマと正義が交錯する犯罪心理サスペンス

韓国版『クリミナル・マインド:KOREA』で最も胸に焼きつく瞬間は、序盤の爆弾テロ事件の場面です。国家犯罪情報局(NCI)の行動分析チーム長カン・ギヒョンが提出したプロファイルが無視され、爆弾は病院で爆発。エース隊員キム・ヒョンジュンは仲間を失い、自分もその場面を目撃します。この失敗が彼らの心に深い傷を刻み、復讐と償い、そして過去と現在が複雑に絡み合う物語が動き出します。この痛みを背負ったまま、彼らが一つ一つの事件を解きほぐしながら前に進む姿が非常に重く、視聴者の胸を締め付けます。

裏テーマ

『クリミナル・マインド:KOREA』は、単なる犯罪捜査ドラマではありません。社会の中にある“見えない失敗”や“個人のトラウマ”、そして組織や上層部の権威主義がいかに人命を左右するかを描きます。ドラマ名は「犯罪心理捜査」に焦点を当てますが、その裏にあるのは、制度の不備や人間の「判断の重み」、過去の過ちを正すための葛藤です。たとえば、プロファイルを無視した上層部の判断が大惨事を招くという展開は、権威や経験が必ずしも正しいとは限らないことを示し、「責任を取る組織・指導者のあり方」を問いかけます。また、登場人物それぞれが抱えるトラウマや内面の葛藤が、捜査の正義と個人の心の平穏との間で揺れる様子を通して、「正義とは何か」「過去とどう向き合うか」という普遍的なテーマを浮き彫りにします。

制作の裏側のストーリー

この作品は、アメリカのドラマ『Criminal Minds』の正式なリメイク版として、2017年に制作されました。スタジオドラゴンが主体となり、Taewon Entertainmentなども関わっています。脚本はホン・スンヒョン、演出はヤン・ユンホ。当初、KBS2テレビ局での放送が予定されていましたが、その後tvNに移行しました。また、制作開始以前にはキャストの変動や監督の降板など、制作体制における調整があったことも伝えられています。

オリジナルの『Criminal Minds』は2005年からCBSで放送され、15シーズン以上・300話を超える長寿シリーズです。FBIの行動分析ユニット(BAU)が未解決犯罪を心理学的に解明し、犯人像を浮かび上がらせるという斬新な構成で、アメリカ国内で最高視聴者数1400万人前後を記録したシーズンもありました。さらにNetflixなどの配信プラットフォームでは2021年に約338億分視聴され、米国で「最もストリーミングされた番組」の一つとされています。需要調査においても米国では平均の約24倍、韓国では約12倍の視聴需要を持つと報告されるほどのブランド力を誇ります。こうした圧倒的なネームヴェリューを背景に、韓国版は期待と注目を浴びながら制作されました。

キャラクターの心理分析

カン・ギヒョン(チーム長)は、プロファイリングと現場での直感との間で揺れています。理論的な分析に基づく判断を重視する立場にありますが、爆弾テロの失敗後には自信を失い、過去の選択と結果を悔いる姿があります。彼は完璧を求めるがゆえに、人間としての弱さも露呈させます。

キム・ヒョンジュンは、過去の爆発事件で仲間を失った罪悪感を持ち、それが彼の行動の根底にあります。彼の捜査スタイルは直感が主体で、しばしばルールを無視してでも真実に近づこうとします。この過激さは彼自身のトラウマと関係していて、仲間との信頼関係や上司ギヒョンとの関係の中で葛藤が生まれます。

ハ・ソヌはプロトコールと分析を重視する“規律の人”です。彼女は女性として、また行動分析官として組織で認められるために、自らを律する姿があります。危機の中でも冷静であろうと努力しますが、過去の経験や家族関係に由来する傷が彼女の中にあります。それが時折彼女を人間らしく、そして脆く見せます。

視聴者の評価

このドラマを見終えた後、多くの視聴者が抱くのは「重厚感」と「余韻」です。単発の事件が連続するだけでなく、それぞれの事件がキャラクターの過去とリンクし、視聴者にも“もし自分が彼らの立場だったら”という思いを呼び起こします。胸が締め付けられたり、涙がこぼれそうになったりする場面が多いという感想が多数あります。

また、捜査と人間ドラマのバランスが丁寧であること、プロファイル分析のプロセスや心理描写の深さが評価されています。一方で、テンポの速さや事件発生から解決までの急激な展開に圧を感じたという視聴者も一部にいます。

海外の視聴者の反応

日本の視聴者からは、主演のイ・ジュンギの現代劇での役どころや、爆弾処理班出身というバックグラウンドが新鮮という声が多いです。また、アメリカの原作と比べて、“家族・トラウマ”などヒューマン要素を強めている点が支持されています。

アメリカや欧米圏では、原作シリーズを知っているファンから「韓国版のキャラクター設定の差異」や「社会背景が違う中でどう描くか」に興味を持った意見が見られます。たとえば、組織の上下関係や警察や国家機関への信頼という観点が韓国の社会背景を反映したものになっていると肯定的に語られることが多いです。

ドラマが与えた影響

このドラマが放送されたことで、“犯罪心理プロファイリング”というテーマに対する関心が韓国内で高まりました。プロファイリングを題材とする番組や記事、ドキュメンタリーが増えるきっかけになったという指摘があります。また、イ・ジュンギのスタイルや衣装、キャラクターの服装が注目され、彼が演じるヒョンジュンの現場捜索要員としてのアクション装備やワークウェアがファッションとして話題になりました。さらに、オリジナル版『Criminal Minds』がアメリカで社会現象的なヒットを生み、世界的にも強大なブランド価値を持つことから、韓国版は「国際的なブランドを背負うリメイク作品」として文化的注目度を高めました。

撮影場所やロケ地にも注目が集まり、ドラマに登場するNCIオフィスや被害現場、事件発生場所が“クライムファン”“韓国ドラマ好き”旅行者の興味を引くスポットとなっています。

視聴スタイルの提案

このドラマは、集中できる夜や休日に一気見するのがおすすめです。展開のテンポも早めであり、キャラクターの過去と現在が複雑に絡むので、続けて見ることで理解と感情移入が深まります。また、一話ごとに疲労が残る重さがあるので、休憩を挟みながら視聴すると心のバランスが保てます。さらに、サスペンス系が好きな方や、心理分析ものに興味がある方なら、原作版と比較しながら見るのも面白いです。

あなたはこのドラマのどのキャラクターに最も共感しましたか?過去を背負いつつも前に進む姿でしょうか、それとも理性とプロトコールを重んじながらも心の葛藤を抱える人でしょうか?また、原作のアメリカ版と比べて『KOREA版』で良かったと思う点は何でしょう?他におすすめの犯罪心理ドラマがあれば、教えてください。

データ

放送年2017年
話数全20話
最高視聴率4.2% (ケーブルテレビ基準)
制作Studio Dragon、Taewon Entertainment ほか
監督ヤン・ユンホ
演出ヤン・ユンホ(原作演出)/Lee Jung-hyoが途中離脱あり
脚本ホン・スンヒョン

© 2017 Buena Vista International, Inc. ・ Produced by STUDIO DRAGON in association with ABC Studios ・ Original U.S. series『CRIMINAL MINDS』created by JEFF DAVIS ・ Original U.S. series『CRIMINAL MINDS』produced by ABC STUDIOS and CBS TELEVISION STUDIOS