チュ・ジョンヒョクさんは、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のクォン・ミヌ役で広く知られるようになった韓国の俳優です。主人公を意識する同僚の姿に、思わず腹が立ったという方もいるでしょう。一方、『正直にお伝えします!?』では人気歌手を、『トリガー ニュースの裏側』では報道チームの若手を演じています。
役の肩書きだけでなく、相手とどのような距離を取るかが、作品ごとの違いを生みます。代表作三つを軸に、『ユミの細胞たち』のルイ役や俳優になるまでの歩み、本人が語った役作りを紹介します。
競争相手として見る同僚
2022年の『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で演じたクォン・ミヌは、法律事務所ハンバダの新人弁護士です。パク・ウンビンさん演じるウ・ヨンウと同じ職場で働きながら、彼女の能力や成果を競争の中で捉えます。仲間として助け合うだけでは済まない職場の空気を持ち込む人物です。
ミヌは、自分が不利になることに敏感です。何をもって公平とするのかという問題にも、自分の立場を守りたい気持ちが入り込みます。ヨンウの事情を知る視聴者から見ると、その言動には納得できない部分があるでしょう。だからこそ、優秀な人が職場へ入ればすべてうまくいくわけではないという現実が、物語の中に表れます。
この役の印象は、特別な悪事を企む人物の怖さとは少し違います。成果を比べたり、周囲の評価を気にしたりする気持ち自体は身近で、それが行き過ぎた時の嫌な感じに覚えがある。その身近さが、見ている側の感情を動かす役どころです。人物を支持できないことと、その人物が物語で必要な役割を果たしていることは両立します。
チュ・ジョンヒョクさんは2022年のインタビューで、ミヌを現実にいそうな人物として考えたと説明しています。最初の解釈から、監督や脚本家とのやり取りを通して人物の特徴をより明確にしていったそうです。視聴者の印象に残った役が、最初から完成形で用意されていたわけではないことが分かります。
また、仕事中の競争心だけでなく、友人といる時には気楽な顔も持つ人物として捉えたと語っています。一つの役の中に複数の面を置くことで、単なる意地悪な同僚にとどまらない人物像を作ろうとしたのです。ミヌの言動に注目した後、相手が変わると態度がどう変わるかを見直すのも、この作品の楽しみ方になります。
人気歌手の過去と恋
2024年の『正直にお伝えします!?』では、トロット歌手で人気タレントのキム・ジョンホンを演じました。コ・ギョンピョさん演じるアナウンサー、ソン・ギベクと、カン・ハンナさん演じる番組作家オン・ウジュを中心に展開するラブコメディです。
ジョンホンは、最初から順調にスターになった人物ではありません。二十歳でアイドルとしてデビューするものの、活動は思うように続かず、端役やゲスト、リポーターなどさまざまな仕事を経験しました。その後、トロットのオーディション番組で準優勝し、多くの人に親しまれる存在になったという設定です。
華やかな現在だけでなく、長い下積みが人物の背景にあります。さらに、ウジュとは過去に恋人同士だった関係です。仕事では人気者として振る舞える人が、昔から大切に思う相手を前にすると、思いどおりに気持ちを伝えられるとは限らない。社会的な成功と恋愛での自信が別であるところに、この役の面白さがあります。
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のミヌは、同僚の成功に敏感な人物でした。ジョンホンも周囲の人との関係で心が動きますが、その中心には過去の恋があります。似た競争の構図に見えても、何を失いたくないと感じているのかが異なるため、役柄の方向も変わります。
作品の紹介では、チュ・ジョンヒョクさんが歌手役のために歌と振付を練習したことも伝えられました。人物の経歴を会話だけで説明するのではなく、芸能人として人前に立つ姿も必要になる役です。ミヌ役で覚えた方が、明るい作品で別の一面を見る入口に向いています。
真実を追う若手の熱
2025年の『トリガー ニュースの裏側』は、凶悪事件の真相を追う調査報道チームの物語です。チュ・ジョンヒョクさんが演じるカン・ギホは、番組制作を支えるアシスタントプロデューサー。キム・ヘスさん演じるチーム長オ・ソリョン、チョン・ソンイルさん演じるハン・ドと働きます。
ギホには、自分を格好よく見せたい気持ちと、制作の仕事を続けていきたい思いがあります。経験豊かな先輩のそばで働く若手であり、組織の中で自分の場所を作ろうとする人物でもあります。理想だけでは進められない報道の現場に、若い職員の焦りや勢いが加わる役です。
この作品は事件の重さを扱いながら、チーム内の衝突ややり取りには笑いもあります。ギホを見る時は、事件の真相だけを追うのではなく、先輩との仕事の進め方にも目を向けると楽しみが増します。何を正しいと考えるかと、実際に誰とどう動くかが、同じとは限らない職場劇として見ることもできます。
制作会見でチュ・ジョンヒョクさんは、現場で年下の出演者として、周りを楽しくさせる役割も担いたかったと話しました。キム・ヘスさんは、彼の純粋な一面と、生活の実感が伝わる演技を評価しています。画面の中で困難にぶつかるチームを作るために、撮影現場では共演者同士のやり取りが積み重ねられていたことがうかがえます。
日本向けのインタビューでは、国が違っても共感できる事件が描かれていること、共演者たちの組み合わせを楽しんでほしいことを伝えました。主人公一人の活躍だけでなく、三人の考え方の違いが生む場面に注目すると、ギホの役割をつかみやすいでしょう。
ルイとゲーム開発
2021年の『ユミの細胞たち』と2022年の『ユミの細胞たち2』では、ゲーム開発者ルイを演じました。アン・ボヒョンさん演じるク・ウンの仕事仲間で、ゲーム制作の側から物語に関わる人物です。
ユミとウンの恋愛が中心にあっても、ウンには働く場所と同僚がいます。ルイの存在によって、恋人の前で見せる姿とは別に、仕事をするウンの側面が見えてきます。恋愛ドラマの周辺人物として、主人公たちの生活が恋だけでできているわけではないと感じさせる役どころです。
仕事に打ち込むルイを、ミヌやギホと見比べるのも面白い見方です。三人とも組織やチームで働く人物ですが、法律、ゲーム、報道では、仕事の相手も目標も違います。働く人物を演じる時にも、どんな職場で誰と組むのかが役の輪郭を変えています。
閉ざされた場所の不安
2021年の『ハピネス』では、トレーナーのキム・スンボムを演じました。新たな感染症によって集合住宅が隔離される状況を描くスリラーで、ハン・ヒョジュさん、パク・ヒョンシクさんらと共演しています。
スンボムは、感染への疑いと隔離に関わる人物です。外部からの危険だけでなく、同じ建物にいる人をどこまで信じられるかという不安が物語に広がります。『ユミの細胞たち』と同じ2021年の出演作でも、画面の中で人物が置かれる環境は大きく異なります。
恋愛や職場での駆け引きを描く作品から、生活の安全が失われる物語へ。出演作を続けて見ると、チュ・ジョンヒョクさんが明るい人物や憎まれ役のどちらか一方に固定されていないことが分かります。緊張感のある作品が好きな方には、代表作とは別の入口になるでしょう。
俳優になるまで
チュ・ジョンヒョクさんは1991年7月27日生まれ。韓国語名は「주종혁」、英語では「Joo Jong Hyuk」などと表記されます。同名の芸能人と区別する時には、生年と出演作を一緒に確認すると確実です。
本人のインタビューでは、テコンドー道場を営む父親のもとでテコンドーを学び、十代でフィリピンやニュージーランドに留学した経歴が紹介されています。帰国後にクルーズ船のバーテンダーとして働いていた時、広報映像への出演を頼まれたことが、カメラの前に立つ面白さを知るきっかけになりました。
映像の仕事に関心を持ってからは、演技を学ぶ人々に尋ねながら経験を増やしていったそうです。最初から俳優一本で進んできた経歴ではなく、接客や海外生活を経て表現の仕事に出会った歩みです。さまざまな人と接してきた経験を知ると、身近にいそうな人物を考えるという役作りの話にもつながりが感じられます。
共演者と作る場面
ミヌを演じる際の演出陣との相談や、ギホを演じた現場での交流から見えてくるのは、自分一人で役を完成させるのではなく、作品の中で必要な人物像を探る姿勢です。台本に書かれた職業や性格を出発点に、共演相手との関係を具体的にしていく。その積み重ねが、異なる職場の人物を演じる出演歴につながっています。
2025年3月には日本公式ファンクラブが開設されました。日本で作品を通して俳優を知った人にも、活動情報へ触れる場ができています。2026年10月25日時点の紹介では、確認できた出演作と公表された経歴を軸に、その歩みをたどれます。
最初の一本の選び方
最も知られた役から見たいなら『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』、歌手役と恋愛模様を楽しみたいなら『正直にお伝えします!?』がおすすめです。事件を追う緊張感とチームの掛け合いを求めるなら、『トリガー ニュースの裏側』から始めるとよいでしょう。
一つの作品で強く印象に残る俳優だからこそ、別の役を見た時の違いも楽しめます。ミヌの競争心、ジョンホンの過去への思い、ギホの仕事への熱。それぞれが誰を意識して動いているのかを追うことで、チュ・ジョンヒョクさんの出演ドラマがより身近になります。
