キム・ヨンアさんは、企業の代表、弁護士、人事部門の責任者など、仕事で権限を持つ女性を演じてきた韓国の俳優です。『ハイエナ-弁護士たちの生存ゲーム-』のハ・ヘウォン、『未成年裁判』のホ・チャンミ、『ユニコーン~パンギョ物語~』のモニカを比べると、同じ働く女性でも、権力や経験の使い方が違うことが分かります。
緊迫した法廷から、思わず笑いたくなる会社の日常まで。代表作の役柄を入り口に、本人が語った役づくりや、2026年の医療ドラマ出演を紹介します。
代表作と役柄
財閥の経営者として
2020年の『ハイエナ-弁護士たちの生存ゲーム-』は、富裕層の依頼を引き受ける弁護士たちの競争を描く作品です。法律の知識だけでなく、金銭や社会的な力、依頼人の思惑が対立を複雑にします。
キム・ヨンアさんは、イシュムグループの財閥三世で、イシュムエンターテインメントの代表ハ・ヘウォンを演じました。働くことに強い情熱を持ち、能力も認められている人物です。
この役は、法曹界の物語を、弁護士へ仕事を依頼する側から見る手掛かりになります。企業を動かす立場には財産や権限がありますが、そのことだけで家族や組織の問題が解決するわけではありません。どの立場の人が、法律を何のために必要としているのかを考えると、人物関係をつかみやすくなります。
仕事に強い意志を持つ女性や、組織と家族の利害が絡む物語を好む人に向いています。キム・ヨンアさんの出演作の中でも、経営者という立場を理解しながら見る楽しさがある一作です。
判事と向き合う弁護士
2022年の『未成年裁判』では、大手法律事務所の弁護士ホ・チャンミを演じています。少年事件を担当する判事たちの判断を通して、事件の背景や、大人が負う責任を問いかけるドラマです。
チャンミは、主人公シム・ウンソクと司法研修時代の同期。同じ時期に法律を学んだ二人が、判事と弁護士という異なる立場から向き合います。仕事上の対立には、相手を知っている者同士の関係も重なっています。
注目したいのは、同じ法律の世界にいても、担う役割が一致しないことです。裁く側と弁護する側では、論点の扱い方も、誰の立場に立つかも変わります。チャンミを通して見ると、主人公の判断を外側から捉える視点が生まれます。
『ハイエナ-弁護士たちの生存ゲーム-』では企業側の人物だったキム・ヨンアさんが、今度は法律を使う専門職として登場する点も比較できます。事件の結末より、立場の違いから生じる議論に興味がある人へすすめたい出演です。
理想と本音の人事部
同じ2022年の『ユニコーン~パンギョ物語~』では、スタートアップ企業マッコムの人事部門を任されるモニカを演じました。個性的な社員たちが、成長企業を目指して働くオフィスコメディーです。
モニカは大企業の役員を務めた経歴を持つ人物。上下関係に縛られない働き方を口にしながら、実際には大企業出身であることへの自負を捨てきれません。理想として語ることと、自分が頼りにしている価値観の間にずれがあります。
人事を担当する人が、組織のあり方について矛盾を抱えている。この設定が、法廷ドラマとは異なる面白さにつながります。会社を新しくしたいという言葉の背後に、慣れ親しんだ序列や評価が残っていることを、日々の仕事の中で考えられます。
会社の方針や新しい制度に振り回された経験がある人には、親しみやすい入り口です。仕事上の肩書を持つ人物を、緊張を生む側としても、笑いを生む側としても演じていることが分かる一作です。
ドラマでの歩み
キム・ヨンアさんは、舞台やミュージカルにも参加してきた俳優です。ドラマでは、2019年の『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』で、会社代表イ・ソジンを演じています。仕事に厳しく、きっちりした人物でありながら、その印象だけでは収まらない面を持つ役です。
三十歳の女性たちの仕事と恋を描くこの作品では、働く現場の人々も物語を形づくります。ソジンの立場に目を向けることで、主人公たちが関わる会社が、どのような人によって動いているのかを理解できます。
2019年の会社代表から、2020年の財閥企業の経営者、2022年の弁護士と人事責任者へ。職業は近く見えても、それぞれの人物が決められること、守ろうとするもの、周囲から期待されることは異なります。
キム・ヨンアさんの出演歴をたどるときは、強い女性という一言でまとめず、どのような力を持つ役なのかを整理すると違いが分かります。経営、法律、人事という仕事の違いは、そのままドラマの対立の作り方の違いにもつながっています。
本人が語る役づくり
『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』の放送終了後、キム・ヨンアさんは所属事務所を通じて、イ・ソジンを自分なりに表現するため、英語の発音を特徴として取り入れたと説明しています。これは、役柄の輪郭をつくるために本人が明かした具体的な工夫です。
人物の特徴を、会社代表という設定だけに頼らず、話す言葉の印象からも考えていたことが分かります。作品をこれから見る人は、厳しい上司という説明だけで受け取るのではなく、本人が意識した部分を手掛かりに役へ近づくことができます。
この発言を、その後の全作品に共通する演技方針と決めつける必要はありません。特定の作品で何を試したかが分かる点に価値があります。ほかの作品ではどのような人物設定が与えられているかを見比べると、同じ俳優を追う楽しみにつながります。
権限を持つ人の違い
代表作に共通するのは、キム・ヨンアさんの役が、周囲の人の仕事や判断に影響を与える立場にいることです。ただし、全員が同じ方向へ力を使うわけではありません。企業を率いる人、法廷で主張する人、会社のルールを整える人では、相手との関係も変わります。
ハ・ヘウォンは経営者として、ホ・チャンミは法律の専門家として、それぞれ異なる責任を持っています。モニカの場合は、過去の経歴に対する自負が新しい組織でどう作用するかが焦点になります。役を並べると、肩書の強さより、その肩書に人物がどう向き合うかが面白さになります。
また、法廷作品では対立の理由を整理することが大切ですが、コメディーでは、本人が気づきにくい矛盾が見どころになります。権威を持つ人物が出てくるという共通点だけで、同じタイプのドラマだと考えずに選ぶとよいでしょう。
主人公の視点で見ると厳しい相手でも、その人物が担う役割を考えると見え方が変わる場合があります。賛成できるかどうかとは別に、どこから発言している人なのかを捉える。キム・ヨンアさんの出演作を比べるときに役立つ見方です。
近況は病院の経営へ
2026年10月25日時点では、『ドクターX ~白衣のマフィア~』に、病院の経営管理部門を率いるイ・ソンエ役で出演しています。医師たちの診療とは別の位置から、病院という組織を動かす人物です。
医療ドラマの中で、治療を担当する医師だけでなく、運営側がどのような判断をするのかを見る手掛かりになります。患者と向き合う現場の考えと、組織を維持する側の考えが並ぶことで、病院の問題を複数の立場から追えます。
過去に演じた企業の代表や人事責任者と比べると、今回も組織に関わる役ですが、医療機関という場所の違いがあります。経営上の判断が人の命や治療の現場に関わる点を意識すると、職業の違いが持つ重さを考えながら見られます。
最初の一作を選ぶ
緊張感のある対立を楽しみたいなら、『ハイエナ-弁護士たちの生存ゲーム-』が候補です。富や経営に関わる人物の立場から、弁護士たちの世界に入れます。法廷での役割の違いを考えたい人には、『未成年裁判』が向いています。
会社の日常を笑いながら眺めたいなら、『ユニコーン~パンギョ物語~』を選んでみてください。シリアスな役を知ったあとにモニカへ進むと、組織の権限を持つ人物が、別のジャンルでどのような役割を担うかを比べられます。
キム・ヨンアさんを追う面白さは、働く女性の肩書を越えて、その人の価値観や矛盾が見えてくることです。経営者、弁護士、人事責任者の中から、関心のある立場を入り口にすると、次の作品も選びやすくなります。
