キム・ヨンミンさんは、権力を持つ企業の代表、他人の会話を聞く軍人、身近な人を傷つける夫など、立場の異なる人物を演じてきた韓国の俳優です。『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』と『愛の不時着』『夫婦の世界』では、周囲と結ぶ関係が大きく変わります。代表作の役柄と本人が語った作品への向き合い方から、次に見るドラマの選び方を紹介します。
代表作と役柄
主人公を追い込む社長
2018年の『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』では、建設会社の代表ト・ジュニョンを演じました。イ・ソンギュンさんが演じるパク・ドンフンは大学の先輩ですが、会社ではジュニョンのほうが上の立場にあります。かつての関係と職場の序列が逆転していることが、二人の間を考える手掛かりになります。
ジュニョンはドンフンを敵視し、IUさんが演じる契約社員イ・ジアンを利用しようとします。仕事上の地位だけでなく、ドンフンの家庭にも関わる事情があるため、公の立場と私的な欲望が切り離せません。肩書を得たことで、他人との比較や不安までなくなったわけではない人物です。
人と人が支え合うことを描く作品の中で、ジュニョンは、その関係を損なう側に位置します。誰かが人を信じようとする一方で、別の誰かは人間関係を利益のために利用する。この対照に注目すると、物語における役割が分かりやすくなります。
主人公の心情を追うだけでなく、職場の権力や利害が生活へ入り込む物語に関心がある方におすすめです。ジュニョンの行動が、周囲の人の選択にどんな影響を与えるかを見ていく楽しみがあります。
耳を使って働く軍人
2019年から2020年にかけて放送された『愛の不時着』では、盗聴任務に就く軍人チョン・マンボクを演じました。韓国の女性ユン・セリが事故によって北朝鮮へたどり着き、軍人リ・ジョンヒョクと出会うロマンスです。マンボクは、職務上ほかの人の会話を聞く立場にあります。
この役で注目したいのは、情報を手に入れる仕事と、その情報に関わる人々の生活が切り離せないことです。他人の秘密を知ることは、単に有利な立場になることではありません。知ってしまったからこそ、どう行動するかが問題になります。マンボクを、主人公たちの周囲にいる軍人の一人としてだけでなく、職務と人間関係の間にいる人物として見ると面白くなります。
企業の代表として他人を動かすジュニョンとは、組織内で持つ力も、情報との関わり方も違います。同じ俳優が演じていると知ったうえで比べると、職業の設定によって、周囲の人物との距離が大きく変わることが分かります。
ロマンスの中心となる二人に加え、周辺の人たちが作る人間関係を楽しみたい方に向いています。キム・ヨンミンさんの緊張感のある役だけを知っている方にも、別の角度から出演作へ入る機会になります。
夫婦の信頼を傷つける
2020年の『夫婦の世界』では、会計士ソン・ジェヒョクを演じました。パク・ヘジュンさんが演じるイ・テオの友人で、パク・ソニョンさんが演じるコ・イェリムの夫です。中心となる夫婦の問題に加え、ジェヒョクとイェリムの関係にも目が向く構成です。
ジェヒョクは、家庭がありながら別の刺激を求め、妻を傷つける人物として描かれます。2020年5月の聯合ニュースの取材で、キム・ヨンミンさん自身も、役の行動は批判されて当然だという趣旨の見方を示しました。役を演じることと、その行為を肯定することは違うと分かる発言です。
この夫婦を見るポイントは、謝罪や反省が、そのまま相手の信頼回復につながるとは限らないことです。傷つけた側が関係を続けたいと思っても、傷ついた側には別の時間や判断があります。ジェヒョクの気持ちだけで二人の関係を説明しないことが、物語を追ううえで大切になります。
恋愛の始まりよりも、夫婦の間で信頼が崩れる過程や、その後の選択に関心がある方に向いています。身近な関係の中で生まれる利己的な行動を、距離を置きながら考えたいときの候補です。
ドラマ出演の歩み
初期のドラマ出演には、2008年の『ベートーベン・ウィルス~愛と情熱のシンフォニー~』があります。近年の出演作から知った方も、テレビドラマとの関わりが以前から続いていたことを押さえておくと、経歴を捉えやすくなります。
2018年の『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』の後、2019年から2020年にかけて『愛の不時着』、2020年に『夫婦の世界』へ出演しました。企業の代表、軍人、会計士と、職業だけを並べても違いますが、それ以上に、他人へ圧力をかける人なのか、命令を受ける人なのか、親しい相手を傷つける人なのかという位置の変化があります。
2022年の『軍検事ドーベルマン』では、ヨン・ムング役を担当しました。ムングは法律事務所の代表で、軍検事ド・ベマンを演じるアン・ボヒョンさんらと関わります。法律と軍の組織が交わる作品で、人物同士の利害を追う面白さがあります。
会社や軍、法律事務所と、組織の種類はさまざまです。ただ、その場にいるからこそ持てる権限や、逃れにくい責任が、各人物の行動につながっています。社会的な肩書と人間としての弱さを分けて考えると、キム・ヨンミンさんの出演ドラマを見比べやすくなるでしょう。
人物を決めつけない
役柄の魅力を考えるときには、「悪役が多い」「優しい役もある」という分類から、一歩進めてみると面白くなります。ジュニョンとジェヒョクは、どちらも周囲を傷つける行動を取りますが、会社の権力を使う人物と、夫婦の信頼を損なう人物では、相手との関係が異なります。
マンボクは、情報を扱う仕事をしているため、他人の生活を知る立場です。情報を利用して相手を動かすのか、知ったことで相手への見方が変わるのか。何を知っている人物なのかに注目すると、単に味方か敵かという分け方だけでは見えない面が浮かびます。
出演作を続けて見る際には、その人物が自分より弱い立場の人へどう関わるかを比べる方法もあります。会社の代表なら部下や契約社員、家庭の中なら配偶者、組織の一員なら命令を出す人と受ける人。異なる関係の中で人物を見られることが、出演歴を追う楽しみにつながります。
本人が語る作品選び
2020年5月のニューシスのインタビューでは、あらかじめ出演する作品の型を決めていたわけではなく、脚本を読み、その内容へ引かれることが作品選びに影響すると話しました。『愛の不時着』と『夫婦の世界』を経験した時期の、本人の考えです。
特定の役柄だけを計画的に続けていたと決めつけず、脚本との出会いから出演作を見る手掛かりになります。同じ取材では、一つずつ仕事を積み重ねていくことの意味にも触れています。作品ごとに異なる人物を演じる経歴を知るうえで、本人の言葉を添えておきたい部分です。
また、当時の聯合ニュースの取材では、自分自身の家庭では妻の言葉を大切にするという趣旨の話もしています。夫婦関係を傷つけるジェヒョクと、俳優本人を混同しないためにも、役の印象とは別に受け止めたいエピソードです。
近況は野心ある外科医
2026年10月25日時点で確認できる活動は、韓国SBSで10月9日に放送が始まった『ドクターX ~白衣のマフィア~』への出演です。キム・ヨンミンさんは、グソ大学病院の一般外科教授ト・ユンシクを演じています。病院長になることを目指す人物として、SBSから紹介されています。
主人公ケ・スジョンを演じるのは、キム・ジウォンさんです。高い手術の技術を持つ医師と、病院内での地位を求める医師。それぞれの目標が、患者を診る仕事や組織の関係とどう結びつくかが、新作で注目したい点になります。
ト・ジュニョンやヨン・ムングの役から関心を持った方には、専門職の肩書と野心を持つ人物という共通点が、作品を選ぶ手掛かりになるでしょう。ただし、会社や法律事務所と病院では、仕事の目的も他者への影響も異なります。同じ野心という言葉だけでまとめず、医師としてどんな選択をするかを追うと、役の違いが見えてきます。
好みから選ぶ一本
生活の苦しさや人とのつながりを描くドラマが好きなら、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』が候補です。ジュニョンを通して、主人公を取り巻く職場の力関係も見られます。ロマンスの中心だけでなく周辺の人物も楽しみたい方には、『愛の不時着』が向いています。
夫婦の信頼と、それを損なった人の責任を考える作品を求めるなら『夫婦の世界』。より組織的な不正を扱う物語に関心がある方は、『軍検事ドーベルマン』へ進めます。同じ俳優の役を追いながら、好みのジャンルを選べる組み合わせです。
キム・ヨンミンさんの出演作を見比べると、肩書や第一印象だけでは分からない人物の事情が見えてきます。誰と向き合い、何を優先する人なのかを手掛かりに、次の一本を選んでみてください。
