『こんなに親密な裏切り者』父と娘の疑念が肉迫する心理サスペンス

黒い夜中、父親チャン・テス(ハン・ソッキュ)が殺人事件の現場で娘ハビン(チェ・ウォンビン)の名前が関係者として噂されている証拠を突きつけられる瞬間は、この物語の心臓部です。彼の顔には信頼と疑念が同時にうごめき、“娘が本当に関与しているのか?”という恐怖がにじみ出ます。この瞬間が、このドラマ全体を支配するテーマを一気に露わにします。愛と正義、親としての責任と警察官としての誇り、そのすべてが交錯します。

裏テーマ

『こんなに親密な裏切り者』は、表面的なサスペンス以上のメッセージを投げかけます。家庭というもっとも安全だと思われる避難所でさえ、秘密と嘘によって崩れる脆さを描きます。また、このドラマは“信頼とは何か”“真実を知る権利とは何か”という現代社会の問いにも鋭く切り込んでいます。父親として娘を信じたいけれど、プロファイラーとして冷徹に証拠を追わざるを得ないテスの葛藤は、正義の名のもとに見落とされがちな人間の弱さと複雑さを示します。

制作の裏側のストーリー

脚本家ハン・アヨンは、2021年のMBC脚本公募展で本作の脚本が高く評価されて実現しました。監督はソン・ヨンファで、『赤い袖先』など、映像美と細やかな心理描写が評価されている作品を手掛けています。ハン・ソッキュはこのドラマでMBC主演のテレビドラマに約30年ぶりに出演しています。撮影中、父と娘の関係を描くシーンでは、セリフ以上に間(ま)や視線の演技が重視されたという話があります。役者プロとして“嘘をついているかもしれない娘を疑う父”という役どころの重みを感じさせる演技指導がなされたようです。

キャラクターの心理分析

テスは犯罪プロファイラーとして他者の心理を読み解く能力に長けていますが、自分の娘に関しては自分の偏見とも戦う必要があります。父としての愛情が“証拠”を追う冷静さとたびたび相反し、真実への探求が親子の絆を揺るがします。一方ハビンは、高校生という未熟さと社会的期待のはざまで、自分の秘密を抱えながら“普通でありたい”という願いを捨てきれません。疑われることで孤立し、自分の正体を守るために嘘を重ねることもありますが、その背後には“父に誇りを持ってほしい”“自分の価値を証明したい”という心理があります。他のキャラクターたち―プロファイラー仲間、警察関係者、家出少女やそのグループのメンバー―も、それぞれ“所属する社会”“家族”“過去のトラウマ”によって動機付けられています。

視聴者の評価

このドラマを見終えた多くの視聴者は、“重苦しいほどの疑念と緊張感”が最後まで途切れない点を評価しています。「アクションが多いわけではないが、心の内側を抉るような場面が胸に残る」「家族の温かさと同時に、関係性に潜む影」「親とは何かを問い直された」という声が多いです。ネガティブな意見では“展開が遅く感じる”“親子関係描写がしんどくなるほど重い”という感想もあり、好みが分かれるドラマです。

海外の視聴者の反応

日本を含むアジア圏、英語圏でもこのドラマは注目されています。Vikiなどの配信プラットフォームには「娘を信じたいが、証拠が突き付けられるたびに父親として何を選ぶかを考えさせられる」といった声が投稿されています。英語レビューサイトやSNSでは、主演のハン・ソッキュの演技力とハビン役チェ・ウォンビンの新人らしからぬ存在感が高評価を受けており、「この父娘の関係がドラマの核」であるとの意見が多いです。

ドラマが与えた影響

この作品は、親子関係や家族の秘密がテーマの韓国ドラマの中で、精神的なサスペンスをきわめて深く掘り下げた例とされています。心理プロファイラーという職業が主人公という設定が、犯罪ドラマファン以外にも“心理的葛藤”を好む視聴者を引き込んでいます。また、娘の秘密を追う過程で登場する家出少女たちの描写が、社会的マージナルな若者の現実にも視線を向ける機会を持たせています。映像美や細やかな演出も話題で、ロケ地や家の中のインテリア、小道具使いなどが日本のドラマファンから“ドラマの質”を感じさせる要素として称えられています。

視聴スタイルの提案

休日の夜、一気に全話を視聴するスタイルが最もおすすめです。ゆったりとしたテンポで進む場面が多いので、“間”や“表情”をじっくり観察したいときに最適です。また、一人で静かな時間に鑑賞するのがいいです。親子の秘密や感情の揺れがメインのため、他のものに気を取られず集中できる環境がドラマの緊張感をより味わわせます。

あなたはテスが娘ハビンを疑うことを倫理的にどう思いましたか? 証拠が揃っていても、親として“信じる”ことと“疑う”こと、どちらを選ぶべきかあなたはどちら派ですか? また、このドラマを見てほかにおすすめしたい親子ドラマや心理スリラーがあれば、ぜひ教えてください。

データ

放送年2024年(10月11日〜11月15日)
話数全10話
最高視聴率最終話で9.6%(韓国国内)
制作MBC
監督ソン・ヨンファ
演出
脚本ハン・アヨン
俳優名役名
ハン・ソッキュチャン・テス
チェ・ウォンビンチャン・ハビン
ハン・イェリイ・オジン
ノ・ジェウォンク・テフン
ユン・ギョンホオ・ジョンファン
イ・シンギキム・ヨンス
イ・ギョヨプチョ・ギョンビン
キ・ジヌパク・ジェフン
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